今回のインタビューは大学卒業後、株式会社出雲殿へ入社し、葬祭ディレクターとして活躍中の黒栁さん。
入社のきっかけやお仕事への取り組み方、休日の過ごし方までたくさんのお話を伺いました。
早速ですが、葬祭業界に挑戦しようと思われたきっかけを教えて下さい。
黒栁:大学生のころ、インターンシップを活用して当社に参加したことがきっかけでした。
大学では観光業や地域文化に関する勉強をしていました。
また、交流文化学部に所属していたこともあり、接客業で働きたいというイメージが漠然とありました。
就職について考える中「どんな業界で働いたとしても、家族を亡くされたばかりの方と接することはあるんじゃないか?」
ふとそんな思いが浮かびました。
これまでそういった方と接した経験がなかったので、どうせなら葬儀社のインターンシップに参加して、接し方を学ぼうと考えました。
ですから、その時は葬祭業界で働きたいと思っていたわけではなく、接客業を目指すうえで、様々な仕事を体験しておいて損はない、という程度の気持ちで参加しました。
正直、葬儀社のイメージはとても暗い?ものだと感じていたので…
社員もみんな堅そうだし、じめじめしてそう…と、当時は勝手なイメージを抱いていました。
実際に働いてみて、イメージは変わりましたか。
黒栁:社内の雰囲気がイメージと正反対でとても驚きました。
葬儀社なのでお客様に対峙するにあたり、中高年の男性が中心だと思っていたのですが、全然違いました。
オフィス内もにぎやかで、様々な年齢層の社員が楽しそうに働いていてびっくりしました。
性別や年齢を問わず誰でも活躍できる職場だなと。
年下の女性社員が年配の男性社員に対して積極的に意見をしているんです。
私も自分の考えはしっかり伝えたい方なので、どんな立場でも自分の意見を聞いてもらえる体制が整っているのはとても魅力的でした。
こうした風通しの良さもそうですが、他にも女性がキャリアップできている社風を目の当たりにして、一気に働くイメージが湧きました。
インターンを通して、葬儀社のイメージが大きく変わった黒栁さん。
最終的な入社の決め手はどこにあったのでしょうか。
黒栁:ひとつは「卒業型」というキャリアアップシステムです。
入社前から「とにかくキャリアアップしたい」という漠然とした思いがありました。
ですから「入社5年以内に店長になれる」と謳っているような企業も何社か面接を受けました。
そのことを当社の人事担当に話すと「どうして5年以内に店長になれるか、黒栁さんは知ってる?」と質問されたんです。
答えは「退職する方が多いから、必然的に残った人が店長になる」でした。
まだ自分のスキルが十分でなくても店長を任される可能性がある。
それってとても大変だなと。
同時に大学時代の部活動の出来事を思い出しました。
大学時代に所属したチアリーディング部で、キャプテンを任されたんです。
「自分たちの代だから、自分たちで1から作り上げろ」と言われ、先代からの引き継ぎが一切ない状況からのスタートでした。
その時の経験で0からスタートする大変さが嫌というほど身に染みました。
だからこそ仕事では先輩から指導いただける環境で、着実に成長したいという強い思いがあったんです。
ですから「卒業型」と呼ばれている当社のキャリアアップシステムはとても魅力的に感じました。
新しいポジションに就く際、先輩方から指導してもらえるシステムです。
引き継ぐ前に仕事の内容を全て経験できます。
卒業型ならいざ昇進してから慌てることもありません。
業務内容も把握した状態なので、安心して新しいポジションを担当できる理想的な環境だと思いました。
ふたつ目は会社の規模が大きく、様々な職種に挑戦できることです。
仮に希望した職種の仕事ができなくなった場合でも、退職せずに別のキャリアを積むことができると思いました。
私、実はとても怖がりなんです。
お化け屋敷やホラー映画も厳しいレベルです。
葬儀の仕事をする上で、ご遺体を扱う業務は避けることができません。
もし「ご遺体が怖くて触れない!葬祭ディレクターはできない!」となった場合、それを理由に会社を辞めるのはもったいないと思いました。
その点当社では、葬祭事業の他にブライダル事業もあります。
また、バックオフィスに専念するという選択も可能です。
将来的なキャリアアップや他の業務に挑戦したいと考えた時、違う業務を担当できることはありがたいなと思いました。
社内で転職できるようなものですよね。
ひとつの会社に長く勤めることができて良いなと考えました。
将来的に結婚して子供が生まれるかもしれないし、もっとバリバリ働き続けるかもしれません。
沢山の選択肢が存在することで、ライフステージの変化に合わせて長く仕事を続けられる環境はとても魅力的でした。
実際に入社してからギャップはありましたか。
黒栁:想像していたより力仕事が多いことですね。
ご遺体を移動することも少なくないですし、ご遺族の目の前で行うこともあります。
「重たいから無理!」と思っても、他に誰もいなければ自分でやるしかありません。
ご遺族の前で、ぎっくり腰になってしまったこともありました。
ぎっくり腰ですか!それもご遺族の前とは…大変でしたね。
黒栁:そのときは何とか手の力だけで動かせましたが、ものすごく痛かったです。
その場はなんとかなりましたが、痛いしドキドキするしで忘れられない経験です。
また、ご遺体移動の他に祭壇の組み立てや設営もあります。
思った以上に力仕事が多く、かなりギャップを感じました。
逆に社内の雰囲気についてはインターンシップで感じたものと変わらず、全くギャップはありませんでした。
社内交流も盛んで、特に同期入社のメンバーとは色々な形で交流しています。
同じ店舗だけでなく、別店舗に配属されている同期ともLINEなどで話したり励まし合ったりしています。
先輩方も頻繁にランチに誘ってくれます。
葬儀の準備を進める際には、分からないことや疑問点には何でも答えてくれますし、アイディアを出せば、必ず提案を受け止めてくれます。
人間関係はとても良いと思います。
実は新卒配属された店舗から9月頃に新しい店舗に異動になったのですが、そこで目標となる人に出会うことが出来ました!
これまでも憧れる先輩はたくさんいましたが、年齢が離れ過ぎて今の自分に当てはめることが難しかったんです。
その方は10歳くらい年上の女性で、支店長をしています。
支店長は「お客様にとっての近所のお姉さんになる」ということを目指されていて、私の「お客様の孫ポジションになる」という目標にとても近いと感じました。
さらにキャリアアップもしているので、自分の将来をリアルに考えられる存在だと感じました。
お客様との向き合い方や考え方など、尊敬できるところが沢山あるんです。
私も10年後には、支店長のように社員に親しまれ、お客様からも頼りにされるようになりたいと思っています。
ロールモデルを見つけたのですね。
黒栁:そうなんです。
支店長はご結婚されていて「絶対に子供は産みたい」とお話してくれた事がありました。
しかし、葬祭ディレクターの仕事と子育ての両立はとても大変だと思います。
支店長はいつか社員が利用できる保育園を立ち上げるなど、小さなお子さんがいても働き続けられる環境を作りたいとおっしゃっていました。
私もその立ち上げに携わって、支店長が言っているような環境を一緒に作れたら最高だと思っています。結婚して子供が生まれても働き続けられる環境は私にとっても魅力的で励みになりますから。
子育てをしながら働く女性にとっては嬉しい環境ですね。
次に今後のキャリアビジョンについて伺えますか。
黒栁:将来的にはマネジメントにも挑戦したいという願望があります。
現場で働くことももちろん大好きですが、人を動かすことに関しても興味があるので、マネジメントに必要なスキルをきちんと学びたいと思っています。
そのための第一ステップは教育担当者になることかなと考えて、誰に言われたわけでもないですが、3~4人いる後輩社員に勝手に自分なりの業務マニュアルを作って渡したりしています。(笑)
マニュアルを作ったんですか!
黒栁:はい。
私が入社した時に、業務マニュアルがなくとても苦労しました。
これから入社する社員には同じ苦労をしてほしくないと思い、マニュアル作りにチャレンジしたんです。マニュアルはデータ化し、必要に応じて紙で渡しています。
私が勝手にやっていることですが、先々は正式な教育担当になれたらいいなと思っています。
私は新卒で入社し、現場の経験もコツコツと積み重ねてきました。
現場で働く社員の気持ちがわかることは教育担当として強みになると思っています。
これまでの経験を活かして、現場の気持ちがわかる指導者に成長できたらと思います。
働く際にどういったことを大切にされていますか。
黒栁:お客様目線を心がけています。
意外と忘れがちなのが、お客様と同じ動線で動いてみるようにしています。
例えば式場の椅子に座って、どのような景色が見えるのかを確認します。
写真の角度によってお顔が見えなかったり、ガラスが反射してしまったり、実際に座ることで初めて気が付くことがあります。
よくあるのは焼香台に立ってお辞儀をした時、お尻が当たってしまうことです。
他にも、参列者の椅子の位置が近過ぎないか座ってみたりもします。
私以外の社員にも座ってもらうことで、隣との距離感を確認しています。
確かに実際にやってみてわかる気づきは大事ですね。
黒栁:本当に意外と多いと感じます。
ですから「これで大丈夫」と過信せずに、実際にお客様と同じように動いてみることを特に大切にしています。
あと、もうひとつ大切にしていることがあります。
それは、葬祭ディレクターとして自分の中にしっかりと軸を持つことです。
私の軸は「故人様の孫ポジションになること」です。
お客様にとって、孫のように接しやすく可愛がってもらえるような立場を目指しています。
もちろん葬祭ディレクターによってその軸は様々だと思いますが、軸を決めることは、自分の精神を守ることにもつながると感じています。
葬儀は悲しみの行事です。
仕事で毎日のように立ち合いますが、毎回ご遺族と同じように悲しんでいたら精神が持ちません。「自分の役割、軸はこれなんだ」と意識をすることで、ご遺族の悲しみに流され過ぎてしまうことが防げると思います。
葬儀社の社員である私が泣いたりすごく悲しんでいたら、ご遺族はそれに気を取られてしまいます。ご遺族が中心になってお見送りができるように、悲しみの感情すべてに同調しないよう心がけています。
それでもうるっと来てしまうことはありますが、そんな時は一度席を外して感情をリセットするようにしています。
感情をコントロールするのは、とても難しいですね。
黒栁:そうですね。
働いてみてわかったことは、ご遺体との接し方です。
新人の頃はご遺体と接するのが苦手でした。
同じ部屋に2人きりになるのも、お顔を見るのもすごく怖かったです。
こればかりは実際にこの仕事に向き合ってみないと、自分が平気かどうかはわからないと思います。自分の家族以外のご遺体と接するという経験自体が珍しいですからね。
私の場合、先ほどお話した通りとても怖がりだったので本当に不安でした。
しかし、先輩方が生きている人と同じようにご遺体と接しているのを見ているうちに、気が付けば怖くなくなっていました。
今は抵抗なくお声がけしながら接しています。
慣れかもしれませんが、とても不思議な感覚です。
個人差もあるとは思いますが、思い切って挑戦したら「意外となんともなかったな」と思うことと似ているかもしれません。
どんな葬儀が一番印象に残っていますか。
黒栁:一番嬉しかったのは、ご遺族の皆さんが名前を覚えてくださった葬儀ですね。
喪主様が名前を覚えてくださることはよくありますが、ご遺族の皆さんが「久瑠実ちゃん」「久瑠実さん」と呼んでくださったのはとても嬉しかったです。
本当にご家族の一員になれたような気がして、葬儀のお手伝いができて良かったと思いました。
その葬儀は故人様の大好きな音楽を流したり、ご遺族の皆さんで一緒に「ありがとう」と大きな声で伝えたりして、とても印象に残る葬儀になりました。
皆さんが想像する葬儀とは全く違う、明るくて楽しいお見送りだったと思います。
毎日葬儀を行うのが葬祭ディレクターの仕事です。
せっかくなら故人様らしい葬儀を作り上げないともったいないと思っています。
参列される皆様はもちろんですが、私自身の印象にも残る葬儀を作っていけたら最高だなと思います。
故人様らしい葬儀…素敵ですね。
葬祭ディレクターとしてお仕事をする中で困ったことはありますか。
黒栁:あれもこれもとご要望が大きくなってしまう葬儀は大変ですね。
お花の量を増やしたい、お花の色を変えてほしい、祭壇をもっと大きなものに変更したいなど、いろいろなご要望をいただきます。
もちろん可能な限り、精一杯対応はさせていただきますが、全てを叶えるには予算を超えてしまうことも少なくありません。
その点をお伝えすると「どうしてできないの?」と言われてしまうこともあります。
また、当日に急なアクシデントが発生した際も大変ですね。
どんな時でも適切な対応ができる柔軟性も必要だと感じます。
先日行った葬儀では、火葬場からもう一度葬儀場に戻り初七日法要を行う手はずになっていました。事前の打ち合わせで「霊柩車に乗っている方は、別の車で葬儀場に戻ってくださいね」とお伝えしていました。
しかし、当日「あれ?霊柩車で戻れないの?」と急におっしゃいまして…
葬儀場に戻れなくなりますね。
黒栁:そうなんです。
その時は運よく他のご親族が運転する車に乗れたので、なんとか事なきを得ました。
事前にお伝えしたとしても、伝わっていない事もあるんですよね。
心身ともに大変な状況のお客様に、大切なことをお伝えするには工夫が必要だと学びました。
葬祭ディレクターとしてこの一年、様々な経験をされたと思います。
黒栁さんの今後の課題は何でしょう。
黒栁:日頃から知識の乏しさを感じるので、葬儀の知識をもっと増やしたいです。
先輩には「私たちは宗教のプロではなく、接客のプロだから全部を知っている必要はない」と言われます。ですが、先輩の接客を見ていると、葬儀や宗教についてもっと勉強して知識を蓄える必要があると感じることがとても多いです。
たまたまかもしれませんが、私は珍しい宗教の葬儀を担当する機会が多く、葬祭ディレクターとしてデビューしてから2回目で、神道の葬儀担当になったことがありました。
しかも、神道のなかでも特殊なものでした。
先輩方も経験がなく、前例がない状況だったため手探りで進めることになりました。
神主さんと一緒に打ち合わせをするなど、とても緊張感のある葬儀でしたが、とてもよい経験をさせていただきました。
ただ、そういった葬儀を「よい経験だった」で終わらせるのはもったいないと思うので、他の人が同じような状況で苦労しないように、資料を作ったりして貴重な体験や知識を積極的に共有するように心がけています。
知識を共有したい、吸収したいと考えるには理由があります。
宗教や宗派によって、葬儀の際に使ってはいけない言葉があったり、言い換えの言葉が存在します。私はまだ、そういった細かい知識が身に着いていないので、差し支えのないベーシックなやり方をしていますが、将来的には専門用語も交えながらお話ができるようになりたいと思っています。
また、20代という若さから知識不足に思われたり、不安を抱かれる事もあります。
見た目は大きくは変えられませんが、知識や会話から「この人は頼りになるぞ」と信頼していただけるようになりたいです。
知識不足のイメージを払拭するためにも、まずは葬祭ディレクター技能審査に合格して、名札の下に資格証をつけたいと思っています。
資格証をつけることで葬儀のプロだとお客様に認識していただき、安心感や信頼感を持っていただけることにも繋がると考えています。
すでに後輩を受け入れる側になりつつありますから、先輩の良い部分をたくさん盗みつつ、聞けることはどんどん質問して成長しておきたいです。
パワフルな印象の黒栁さん、休日の過ごし方も気になります。
黒栁:今年から始めたスノーボードにすっかり夢中になっています!
予定が空くとスノーボードがしたくて、すぐに雪山に行っちゃいます。
あとは旅行が大好きです。
マイルールがあって、3日確保できたら海外に行くと決めています。最近は一人で韓国に行ってきました。
次は5日ほどまとまったお休みを取得して、グアムに行こうと計画中です。
とにかくきれいな海が大好きなので、海水浴がしたいです!
アクティブですね!
3日間以上のまとまった休暇は頻繁にとれますか。
黒栁: 会社の規模が大きく社員も多いので、お休みは取りやすい環境だと思います。
事前に申請すればきちんと取得できるので「旅行しよう!」と気軽に計画して行けるのはとてもありがたいです。
また当社の特徴は、お互いさまの精神でみんなで一緒に乗り越えながら働く社風だと思います。人手が足りない時でも、社内で別の部門と助け合って乗り越えることが日常茶飯事です。
おかげで「人手が足りないから休みが取れない」なんてことはありません。
仕事とプライベートを目一杯楽しむことができるので、私にはぴったりだと思います。
両方満喫できる環境は黒栁さんにぴったりですね!
最後に、これから葬祭業界を目指す方に一言アドバイスをお願いします。
黒栁:話し上手よりも聞き上手であることですね。
ご夫婦の馴れ初めをお話いただくこともありますし、故人様の趣味や思い出話を聞くこともあります。そういったお話の中に「故人様らしい葬儀」を作り上げるためのヒントがたくさん転がっています。
ですからアンテナをしっかりと立て、些細なことでも拾い上げられる傾聴力が大切だと思います。
いつどんなお客様の担当になるか分かりません。
高齢の故人様の場合もあれば、小さなお子様かもしれません。
どんな葬儀だとしても、覚悟と緊張感を持って真摯に取り組める、そんな葬儀のプロを一緒に目指していけたらいいなと思います。
ありがとうございました!
【編集後記】 きらきらした瞳でお仕事のやりがいなどを、熱心にお話ししてくださった黒栁さん。
働いてみないと分からない、パルモグループの社内風土や働き方まで詳しく教えてくださいました。
将来的にはマネジメントや、より働きやすい職場環境の整備にも挑戦されたいなど、意欲的にお仕事に取り組まれていることも印象的でした。
黒栁さんのこれからを応援しています!
株式会社出雲殿 イズモホール岡崎
黒栁 久瑠実さん
インターンシップを経て、大学卒業後に株式会社出雲殿へ入社。
葬祭ディレクターとして勤務する傍ら、休日は旅行やスノーボードを満喫。
黒栁 久瑠実さん
インターンシップを経て、大学卒業後に株式会社出雲殿へ入社。
葬祭ディレクターとして勤務する傍ら、休日は旅行やスノーボードを満喫。
インターンシップに参加して変わった葬儀社へのイメージ。入社の決めてはこのふたつ。
今日はよろしくお願いします。早速ですが、葬祭業界に挑戦しようと思われたきっかけを教えて下さい。
黒栁:大学生のころ、インターンシップを活用して当社に参加したことがきっかけでした。
大学では観光業や地域文化に関する勉強をしていました。
また、交流文化学部に所属していたこともあり、接客業で働きたいというイメージが漠然とありました。
就職について考える中「どんな業界で働いたとしても、家族を亡くされたばかりの方と接することはあるんじゃないか?」
ふとそんな思いが浮かびました。
これまでそういった方と接した経験がなかったので、どうせなら葬儀社のインターンシップに参加して、接し方を学ぼうと考えました。
ですから、その時は葬祭業界で働きたいと思っていたわけではなく、接客業を目指すうえで、様々な仕事を体験しておいて損はない、という程度の気持ちで参加しました。
正直、葬儀社のイメージはとても暗い?ものだと感じていたので…
社員もみんな堅そうだし、じめじめしてそう…と、当時は勝手なイメージを抱いていました。
実際に働いてみて、イメージは変わりましたか。
黒栁:社内の雰囲気がイメージと正反対でとても驚きました。
葬儀社なのでお客様に対峙するにあたり、中高年の男性が中心だと思っていたのですが、全然違いました。
オフィス内もにぎやかで、様々な年齢層の社員が楽しそうに働いていてびっくりしました。
性別や年齢を問わず誰でも活躍できる職場だなと。
年下の女性社員が年配の男性社員に対して積極的に意見をしているんです。
私も自分の考えはしっかり伝えたい方なので、どんな立場でも自分の意見を聞いてもらえる体制が整っているのはとても魅力的でした。
こうした風通しの良さもそうですが、他にも女性がキャリアップできている社風を目の当たりにして、一気に働くイメージが湧きました。
インターンを通して、葬儀社のイメージが大きく変わった黒栁さん。
最終的な入社の決め手はどこにあったのでしょうか。
黒栁:ひとつは「卒業型」というキャリアアップシステムです。
入社前から「とにかくキャリアアップしたい」という漠然とした思いがありました。
ですから「入社5年以内に店長になれる」と謳っているような企業も何社か面接を受けました。
そのことを当社の人事担当に話すと「どうして5年以内に店長になれるか、黒栁さんは知ってる?」と質問されたんです。
答えは「退職する方が多いから、必然的に残った人が店長になる」でした。
まだ自分のスキルが十分でなくても店長を任される可能性がある。
それってとても大変だなと。
同時に大学時代の部活動の出来事を思い出しました。
大学時代に所属したチアリーディング部で、キャプテンを任されたんです。
「自分たちの代だから、自分たちで1から作り上げろ」と言われ、先代からの引き継ぎが一切ない状況からのスタートでした。
その時の経験で0からスタートする大変さが嫌というほど身に染みました。
だからこそ仕事では先輩から指導いただける環境で、着実に成長したいという強い思いがあったんです。
ですから「卒業型」と呼ばれている当社のキャリアアップシステムはとても魅力的に感じました。
新しいポジションに就く際、先輩方から指導してもらえるシステムです。
引き継ぐ前に仕事の内容を全て経験できます。
卒業型ならいざ昇進してから慌てることもありません。
業務内容も把握した状態なので、安心して新しいポジションを担当できる理想的な環境だと思いました。
ふたつ目は会社の規模が大きく、様々な職種に挑戦できることです。
仮に希望した職種の仕事ができなくなった場合でも、退職せずに別のキャリアを積むことができると思いました。
私、実はとても怖がりなんです。
お化け屋敷やホラー映画も厳しいレベルです。
葬儀の仕事をする上で、ご遺体を扱う業務は避けることができません。
もし「ご遺体が怖くて触れない!葬祭ディレクターはできない!」となった場合、それを理由に会社を辞めるのはもったいないと思いました。
その点当社では、葬祭事業の他にブライダル事業もあります。
また、バックオフィスに専念するという選択も可能です。
将来的なキャリアアップや他の業務に挑戦したいと考えた時、違う業務を担当できることはありがたいなと思いました。
社内で転職できるようなものですよね。
ひとつの会社に長く勤めることができて良いなと考えました。
将来的に結婚して子供が生まれるかもしれないし、もっとバリバリ働き続けるかもしれません。
沢山の選択肢が存在することで、ライフステージの変化に合わせて長く仕事を続けられる環境はとても魅力的でした。
目標は10歳年上の支店長。黒栁さんのキャリアビジョンとは?
将来のライフステージを見越して選択されたのですね。実際に入社してからギャップはありましたか。
黒栁:想像していたより力仕事が多いことですね。
ご遺体を移動することも少なくないですし、ご遺族の目の前で行うこともあります。
「重たいから無理!」と思っても、他に誰もいなければ自分でやるしかありません。
ご遺族の前で、ぎっくり腰になってしまったこともありました。
ぎっくり腰ですか!それもご遺族の前とは…大変でしたね。
黒栁:そのときは何とか手の力だけで動かせましたが、ものすごく痛かったです。
その場はなんとかなりましたが、痛いしドキドキするしで忘れられない経験です。
また、ご遺体移動の他に祭壇の組み立てや設営もあります。
思った以上に力仕事が多く、かなりギャップを感じました。
逆に社内の雰囲気についてはインターンシップで感じたものと変わらず、全くギャップはありませんでした。
社内交流も盛んで、特に同期入社のメンバーとは色々な形で交流しています。
同じ店舗だけでなく、別店舗に配属されている同期ともLINEなどで話したり励まし合ったりしています。
先輩方も頻繁にランチに誘ってくれます。
葬儀の準備を進める際には、分からないことや疑問点には何でも答えてくれますし、アイディアを出せば、必ず提案を受け止めてくれます。
人間関係はとても良いと思います。
実は新卒配属された店舗から9月頃に新しい店舗に異動になったのですが、そこで目標となる人に出会うことが出来ました!
これまでも憧れる先輩はたくさんいましたが、年齢が離れ過ぎて今の自分に当てはめることが難しかったんです。
その方は10歳くらい年上の女性で、支店長をしています。
支店長は「お客様にとっての近所のお姉さんになる」ということを目指されていて、私の「お客様の孫ポジションになる」という目標にとても近いと感じました。
さらにキャリアアップもしているので、自分の将来をリアルに考えられる存在だと感じました。
お客様との向き合い方や考え方など、尊敬できるところが沢山あるんです。
私も10年後には、支店長のように社員に親しまれ、お客様からも頼りにされるようになりたいと思っています。
ロールモデルを見つけたのですね。
黒栁:そうなんです。
支店長はご結婚されていて「絶対に子供は産みたい」とお話してくれた事がありました。
しかし、葬祭ディレクターの仕事と子育ての両立はとても大変だと思います。
支店長はいつか社員が利用できる保育園を立ち上げるなど、小さなお子さんがいても働き続けられる環境を作りたいとおっしゃっていました。
私もその立ち上げに携わって、支店長が言っているような環境を一緒に作れたら最高だと思っています。結婚して子供が生まれても働き続けられる環境は私にとっても魅力的で励みになりますから。
子育てをしながら働く女性にとっては嬉しい環境ですね。
次に今後のキャリアビジョンについて伺えますか。
黒栁:将来的にはマネジメントにも挑戦したいという願望があります。
現場で働くことももちろん大好きですが、人を動かすことに関しても興味があるので、マネジメントに必要なスキルをきちんと学びたいと思っています。
そのための第一ステップは教育担当者になることかなと考えて、誰に言われたわけでもないですが、3~4人いる後輩社員に勝手に自分なりの業務マニュアルを作って渡したりしています。(笑)
マニュアルを作ったんですか!
黒栁:はい。
私が入社した時に、業務マニュアルがなくとても苦労しました。
これから入社する社員には同じ苦労をしてほしくないと思い、マニュアル作りにチャレンジしたんです。マニュアルはデータ化し、必要に応じて紙で渡しています。
私が勝手にやっていることですが、先々は正式な教育担当になれたらいいなと思っています。
私は新卒で入社し、現場の経験もコツコツと積み重ねてきました。
現場で働く社員の気持ちがわかることは教育担当として強みになると思っています。
これまでの経験を活かして、現場の気持ちがわかる指導者に成長できたらと思います。
自分の軸を決めることは精神を守ることにも繋がる。黒栁さんの軸は「故人様の孫ポジションになること」
素敵な目標ですね。働く際にどういったことを大切にされていますか。
黒栁:お客様目線を心がけています。
意外と忘れがちなのが、お客様と同じ動線で動いてみるようにしています。
例えば式場の椅子に座って、どのような景色が見えるのかを確認します。
写真の角度によってお顔が見えなかったり、ガラスが反射してしまったり、実際に座ることで初めて気が付くことがあります。
よくあるのは焼香台に立ってお辞儀をした時、お尻が当たってしまうことです。
他にも、参列者の椅子の位置が近過ぎないか座ってみたりもします。
私以外の社員にも座ってもらうことで、隣との距離感を確認しています。
確かに実際にやってみてわかる気づきは大事ですね。
黒栁:本当に意外と多いと感じます。
ですから「これで大丈夫」と過信せずに、実際にお客様と同じように動いてみることを特に大切にしています。
あと、もうひとつ大切にしていることがあります。
それは、葬祭ディレクターとして自分の中にしっかりと軸を持つことです。
私の軸は「故人様の孫ポジションになること」です。
お客様にとって、孫のように接しやすく可愛がってもらえるような立場を目指しています。
もちろん葬祭ディレクターによってその軸は様々だと思いますが、軸を決めることは、自分の精神を守ることにもつながると感じています。
葬儀は悲しみの行事です。
仕事で毎日のように立ち合いますが、毎回ご遺族と同じように悲しんでいたら精神が持ちません。「自分の役割、軸はこれなんだ」と意識をすることで、ご遺族の悲しみに流され過ぎてしまうことが防げると思います。
葬儀社の社員である私が泣いたりすごく悲しんでいたら、ご遺族はそれに気を取られてしまいます。ご遺族が中心になってお見送りができるように、悲しみの感情すべてに同調しないよう心がけています。
それでもうるっと来てしまうことはありますが、そんな時は一度席を外して感情をリセットするようにしています。
感情をコントロールするのは、とても難しいですね。
黒栁:そうですね。
働いてみてわかったことは、ご遺体との接し方です。
新人の頃はご遺体と接するのが苦手でした。
同じ部屋に2人きりになるのも、お顔を見るのもすごく怖かったです。
こればかりは実際にこの仕事に向き合ってみないと、自分が平気かどうかはわからないと思います。自分の家族以外のご遺体と接するという経験自体が珍しいですからね。
私の場合、先ほどお話した通りとても怖がりだったので本当に不安でした。
しかし、先輩方が生きている人と同じようにご遺体と接しているのを見ているうちに、気が付けば怖くなくなっていました。
今は抵抗なくお声がけしながら接しています。
慣れかもしれませんが、とても不思議な感覚です。
個人差もあるとは思いますが、思い切って挑戦したら「意外となんともなかったな」と思うことと似ているかもしれません。
貴重な経験をしたら積極的に情報共有。知識を蓄えてお客様に安心と信頼を感じてほしい。
ありがとうございます。どんな葬儀が一番印象に残っていますか。
黒栁:一番嬉しかったのは、ご遺族の皆さんが名前を覚えてくださった葬儀ですね。
喪主様が名前を覚えてくださることはよくありますが、ご遺族の皆さんが「久瑠実ちゃん」「久瑠実さん」と呼んでくださったのはとても嬉しかったです。
本当にご家族の一員になれたような気がして、葬儀のお手伝いができて良かったと思いました。
その葬儀は故人様の大好きな音楽を流したり、ご遺族の皆さんで一緒に「ありがとう」と大きな声で伝えたりして、とても印象に残る葬儀になりました。
皆さんが想像する葬儀とは全く違う、明るくて楽しいお見送りだったと思います。
毎日葬儀を行うのが葬祭ディレクターの仕事です。
せっかくなら故人様らしい葬儀を作り上げないともったいないと思っています。
参列される皆様はもちろんですが、私自身の印象にも残る葬儀を作っていけたら最高だなと思います。
故人様らしい葬儀…素敵ですね。
葬祭ディレクターとしてお仕事をする中で困ったことはありますか。
黒栁:あれもこれもとご要望が大きくなってしまう葬儀は大変ですね。
お花の量を増やしたい、お花の色を変えてほしい、祭壇をもっと大きなものに変更したいなど、いろいろなご要望をいただきます。
もちろん可能な限り、精一杯対応はさせていただきますが、全てを叶えるには予算を超えてしまうことも少なくありません。
その点をお伝えすると「どうしてできないの?」と言われてしまうこともあります。
また、当日に急なアクシデントが発生した際も大変ですね。
どんな時でも適切な対応ができる柔軟性も必要だと感じます。
先日行った葬儀では、火葬場からもう一度葬儀場に戻り初七日法要を行う手はずになっていました。事前の打ち合わせで「霊柩車に乗っている方は、別の車で葬儀場に戻ってくださいね」とお伝えしていました。
しかし、当日「あれ?霊柩車で戻れないの?」と急におっしゃいまして…
葬儀場に戻れなくなりますね。
黒栁:そうなんです。
その時は運よく他のご親族が運転する車に乗れたので、なんとか事なきを得ました。
事前にお伝えしたとしても、伝わっていない事もあるんですよね。
心身ともに大変な状況のお客様に、大切なことをお伝えするには工夫が必要だと学びました。
葬祭ディレクターとしてこの一年、様々な経験をされたと思います。
黒栁さんの今後の課題は何でしょう。
黒栁:日頃から知識の乏しさを感じるので、葬儀の知識をもっと増やしたいです。
先輩には「私たちは宗教のプロではなく、接客のプロだから全部を知っている必要はない」と言われます。ですが、先輩の接客を見ていると、葬儀や宗教についてもっと勉強して知識を蓄える必要があると感じることがとても多いです。
たまたまかもしれませんが、私は珍しい宗教の葬儀を担当する機会が多く、葬祭ディレクターとしてデビューしてから2回目で、神道の葬儀担当になったことがありました。
しかも、神道のなかでも特殊なものでした。
先輩方も経験がなく、前例がない状況だったため手探りで進めることになりました。
神主さんと一緒に打ち合わせをするなど、とても緊張感のある葬儀でしたが、とてもよい経験をさせていただきました。
ただ、そういった葬儀を「よい経験だった」で終わらせるのはもったいないと思うので、他の人が同じような状況で苦労しないように、資料を作ったりして貴重な体験や知識を積極的に共有するように心がけています。
知識を共有したい、吸収したいと考えるには理由があります。
宗教や宗派によって、葬儀の際に使ってはいけない言葉があったり、言い換えの言葉が存在します。私はまだ、そういった細かい知識が身に着いていないので、差し支えのないベーシックなやり方をしていますが、将来的には専門用語も交えながらお話ができるようになりたいと思っています。
また、20代という若さから知識不足に思われたり、不安を抱かれる事もあります。
見た目は大きくは変えられませんが、知識や会話から「この人は頼りになるぞ」と信頼していただけるようになりたいです。
知識不足のイメージを払拭するためにも、まずは葬祭ディレクター技能審査に合格して、名札の下に資格証をつけたいと思っています。
資格証をつけることで葬儀のプロだとお客様に認識していただき、安心感や信頼感を持っていただけることにも繋がると考えています。
すでに後輩を受け入れる側になりつつありますから、先輩の良い部分をたくさん盗みつつ、聞けることはどんどん質問して成長しておきたいです。
仕事もプライベートも全力で楽しむ!「お互いさま」の社風がお休みを取りやすくしている!?
お仕事に邁進されていますね!パワフルな印象の黒栁さん、休日の過ごし方も気になります。
黒栁:今年から始めたスノーボードにすっかり夢中になっています!
予定が空くとスノーボードがしたくて、すぐに雪山に行っちゃいます。
あとは旅行が大好きです。
マイルールがあって、3日確保できたら海外に行くと決めています。最近は一人で韓国に行ってきました。
次は5日ほどまとまったお休みを取得して、グアムに行こうと計画中です。
とにかくきれいな海が大好きなので、海水浴がしたいです!
アクティブですね!
3日間以上のまとまった休暇は頻繁にとれますか。
黒栁: 会社の規模が大きく社員も多いので、お休みは取りやすい環境だと思います。
事前に申請すればきちんと取得できるので「旅行しよう!」と気軽に計画して行けるのはとてもありがたいです。
また当社の特徴は、お互いさまの精神でみんなで一緒に乗り越えながら働く社風だと思います。人手が足りない時でも、社内で別の部門と助け合って乗り越えることが日常茶飯事です。
おかげで「人手が足りないから休みが取れない」なんてことはありません。
仕事とプライベートを目一杯楽しむことができるので、私にはぴったりだと思います。
両方満喫できる環境は黒栁さんにぴったりですね!
最後に、これから葬祭業界を目指す方に一言アドバイスをお願いします。
黒栁:話し上手よりも聞き上手であることですね。
ご夫婦の馴れ初めをお話いただくこともありますし、故人様の趣味や思い出話を聞くこともあります。そういったお話の中に「故人様らしい葬儀」を作り上げるためのヒントがたくさん転がっています。
ですからアンテナをしっかりと立て、些細なことでも拾い上げられる傾聴力が大切だと思います。
いつどんなお客様の担当になるか分かりません。
高齢の故人様の場合もあれば、小さなお子様かもしれません。
どんな葬儀だとしても、覚悟と緊張感を持って真摯に取り組める、そんな葬儀のプロを一緒に目指していけたらいいなと思います。
ありがとうございました!
【編集後記】 きらきらした瞳でお仕事のやりがいなどを、熱心にお話ししてくださった黒栁さん。
働いてみないと分からない、パルモグループの社内風土や働き方まで詳しく教えてくださいました。
将来的にはマネジメントや、より働きやすい職場環境の整備にも挑戦されたいなど、意欲的にお仕事に取り組まれていることも印象的でした。
黒栁さんのこれからを応援しています!